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Flowers

 花の名前を標題とした "桜"、"椿"、"紫陽花"、"薔薇"、"秋桜"、"彼岸花"、"柊"、"蓮" からなる8曲の作品集。1つの曲に対してそれぞれ、ピアノと電子音響、ピアノ独奏の2つのヴァージョンが収められている。

 花を描写した音楽ではなく、その花が咲く季節感や佇まいから自由に想像を膨らませ、響きの色彩や質感にこだわりながら音を生み出した。電子音響はピアノに対して薄化粧のように、あるいはピアノの傍で静かに息づき、淡い色調の音世界を織り紡いでいる。

 

桜 - Cherry Blossoms -

 中高音域を中心とした繊細な曲想。桜の花びらのように舞う歌を和音が支える。構成的にはほぼ1部構成となっており、最後には旋律が遠くに消えていくような短いコーダがつけられる。

 

椿 - Camellia -

 前半と後半の2部に分けられる。前半は揺れ動く4つの音素材を中心として旋律が織られ、後半はその4音の旋律素材が発展して流れを生み出し、歌となる。光彩に溢れた春らしい音楽。

 

紫陽花 - Hydrangea -

 雨の風景をイメージしたピアノと電子音響。曲全体に同音反復の旋律素材が用いられているが、これはChopinの前奏曲集op.28-15「雨だれ」から着想を得ている。和音の色彩が気に入っている一曲。

 

薔薇 - Rose -

 テーマカラーは鮮やかな、または深い赤。妖艶な色彩の音楽を目指した。分散和音的な音型の繰り返しと、それに伴う和音変化で作曲されている。終盤では動きが止まり、繊細な表現となる。

 

秋桜 - Cosmos -

 "桜"と趣や楽曲構成が似ているが、響きの色彩は異なる。小さく風がそよぐような歌を和音が支える形。秋の侘しく色褪せた景色のような音楽となった。

 

彼岸花 - Red Spider Lily -

 一定の形の和音が旋律的に歌いながら空間を回遊する音楽。電子音響は浮遊する魂のような響き。静止画のような音像で、アルバムの中では最も一貫性の強い曲。

 

柊 - Holly -

 雪が降るような、下降する3音の素材が反復される。この曲も"彼岸花"と同じく静止画的だが、緩やかな和音の響きの変化を伴う。冷たい質感の電子音響が背景となっている。

 

蓮 - Lotus -

 断片的な歌が和音と共に静かに柔らかく明滅する。空間に一つずつ音の花が咲いていくような音楽。最後には上昇し、虚空へと消えていく。

木村 真人 / Masato Kimura

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